『プルーと満月のむこう』たからしげる

プルーと満月のむこう (スプラッシュ・ストーリーズ)
裕太は幼い頃から、鳥のさえずりが不思議な声に聞こえます。
ぐーるる→来るよ、きっきー→注意せよ、きゅるる→ことわれ、ひゅるき→落ち着け、ちっち→がんばれ、ぴゆゆ→もしもし……それらは、人間の言葉が聞こえるのではなく、裕太の耳には、鳥の声が自然に意味をなして聞こえてくるのです。
いったい、なぜ? 不思議に思っていた裕太。
そんなある日、親友の一騎が、小鳥店でセキセイインコを買いました。青空のような羽色のインコに、一騎は「プルー」と名づけます。それは、裕太の亡くなったお父さんが飼っていたインコの名前と同じでした。
プルーは、会う度に裕太に話しかけてきます。
やがて、裕太はプルーから聞こえる不思議な声が、亡くなったお父さんの声ではないかと思い始めるのです……
現代の聞き耳頭巾ともいえる、温かい物語。繊細な少年の心模様が丁寧に描かれています。表紙絵の指が染まるようなブルーがとても印象に残りました。ちょうど、私も再話で『聞き耳頭巾』を書いているところなので、偶然とはいえ、なんだか不思議な気持ちになりました。物語のセキセイインコのプルーはとても可愛いです。きっと、作家さんも画家さんも小鳥好きさんではないのでしょうか。