『空の絵本』あまんきみこ

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空の絵本 (ことばのおくりもの) [ あまんきみこ ]
あまんさん、初めてのエッセイ集です。
人が生きることの喜びがあふれています。
早くに死別されたお母さんの存在が、あまんさんの中でどんなに大きかったか。
子どもにとって、身近な環境である学校の先生。その先生の優しさがどれほど子どもを癒し包み込むか、たったワンシーンだけで胸に迫ります。
私はこのワンシーンと全く正反対の体験があり、学校の先生が大嫌いでした。
その体験は『風のラヴソング 完全版』(講談社青い鳥文庫)の未発表の一編に書きました。幼かったあまんさんを包み込んでくれた菩薩のような先生と、自分の体験を比べて、ついため息が出ました。
あまんさんの天女のようなお人柄は、こういった環境で育てられたのだと、うらやましくもありましたが、その分、あまんさんがこれまで生きてこられたさまざまな出会いの中で、やはり周りの人たちを天女のように優しく包み込んでこられたのだと感じました。菩薩に出会った人は、菩薩に育つのでしょうか。
でも、忘れてはなりません。あまんさんは旧満州育ちでいらっしゃるのです。つまり、子どもの頃に終戦をむかえていらっしゃるということです。敗戦によって、外地からの引き上げがどれほど悲惨であったか。そして、死ぬような思いをして日本へ帰って来ても、戦後の暮らしがどれほど厳しいものであったか。
私たちは書き残された証言、フィルムなどによって知ることができます。
けれども、このエッセイ集には、陽だまりのような風景だけが浮かんでくるのです。戦時であっても、子どもは身近な環境によってこれほどの幸せを得られるのだと思えば、家族や学校の先生の役割はどれほど大きいことか。
身が引き締まるような思いと、深く温かい感動が広がります。