『古道具ほんなら堂 ちょっと不思議あり』楠章子

古道具 ほんなら堂
「まめだのせっけん」「ガラスビンのしずく」「にじ色のこな」「かけた茶わん」の連作短編集。
ほんなら堂の女主人は、橙花さんというおばあさん。お行儀にうるさくて、ちょっと妖しくて怖い橙花さんですが、子供たちがピンチに陥るといつも「ちょっとの不思議」を起こしてくれるのです。
からくり時計、朱塗りのさかずき、近道の鏡、七草の茶わん、まめだのおっちゃん、夜店のおっちゃん、いつまでも年を取らない少年などなど……妖しい古道具、妖しい人々が数々登場。それだけでもワクワクします。
でも、何より、ちょっとの不思議がいいのです。こどもたちは橙花さんのちょっとの不思議に助けられるけれど、最後は自ら危機を切り抜けてゆくのです。
こどもの力を信じた物語。そこがとても素敵です。
ちょっと怪奇、でも温かい読後感が残ります。
デビュー作で、多くの新人賞作家と最後まで争った楠章子さんの期待の第二作です。