生きるって何だろう、私って何?

『由宇の154日間』からしげる

由宇の154日間

由宇の154日間

幸せも、命も、金庫に入れてとっておくことはできない。
「幸せってなんだろう。命ってなんだろう。人が生まれること、人が死ぬこと、命のしくみが見えてくる。
命の不可思議さや、命の大切さや、幸せって何かがわかる本だ」医師・作家 鎌田實

帯に書かれていた言葉です。うん、その通り!といってしまえば、何も書くことがなくなってしまうので、私なりの感想を書いてみます。
まず、これは子どもの本なのに、人間の生と死、そして生きる意味という、大きくて重いテーマに果敢に挑んだ物語です。
文章はやさしく、子どもでも読めます。でも、語られる死に、私は震え上がってしまいました。けれども、そこから始まる物語のなんと壮大なことでしょうか。人間と宇宙、ちっぽけすぎる存在と、大きすぎる存在が、読み終えた時に重なり合っているのに気付きます。そう、これは、小さな人間の物語ではなく、人間と宇宙を共に包みこんでしまう物語なのです。しっとりと幸せな物語の終わりに、ほっと癒される一冊です。
『メニメニハート』令丈ヒロ子
メニメニハート

メニメニハート

こどもの本の講談社の100周年記念作品です。
美人でウソだらけのサギノ。マジメすぎてこわいマジ子。
「呪いの大鏡」の前でぶつかった二人から、ハートが飛び出て、転校生の男子生徒、コクニ君の目の前で入れ替わってしまった!
まるで正反対な二人のハートが入れ替わったら、どうなる?

と書くと、うん、どこかで聞いたような話だなと思う人もいるかもしれませんね。たしかに、少女と少年がぶつかって、心が入れ替わってしまう話が昔ありました。いえいえ、でも、これはまったく違うのです。なぜかというと、入れ替わったのは二人の心の一部分だけ。全部ではないのです。だからこそ、ややこしい。おまけに、その後もどんどん入れ替わるのですから、えらいことです。メニメニハートが宙を舞い、あげくの果てに、二人は想像もしないとんでもないことに……と、この先は読んでのお楽しみ。
令丈ねえさんお得意のほんわかギャグが満載です。なにより、令丈さんの作品はどの登場人物にも、作者の愛がそそがれていて、読んでいてとても心地よくてあったかいのです。