神さまのいざない(続・見えない絆)

昨日は戦国関係の取材に行ってきました。磐座(いわくら)と古い町へ。主に、戦国が舞台の『忍剣花百姫伝7』と『時空忍者おとめ組!』関係の取材だったのですが、磐座については、まさにホームランの取材だったため、本が出版されるまでは、ここでくわしく書くことはできません。
で、古い町について書きます。ここはまた素晴らしいところでした。まあ、下の写真を見て下さい。
 江戸時代へタイムスリップする町角
ここは、奈良県橿原市今井町です。戦国時代の環濠集落が町の形で残っている稀有な例なのです。環濠集落というのは、字の通り、濠(ほり)をめぐらせた城塞都市です。
そう、ここは戦国時代、本願寺派の僧侶が開いた町でした。当然、信長に反抗したのですが、明智光秀を通じて降伏、おかげで破壊をまぬがれ、その後幕末まで、商業都市として発展した商人の町なのです。幕末、幕府が倒れ、大名家もなくなったため、この町の大商人たちも貸し倒れの憂き目をみました。かつては、大名家も頭を下げた大商人が軒を並べたこの町の人々も、今では、大多数がサラリーマンだそうです。
けれども、この街並みがなぜ残ったかというと、現代の道路整備などからことごとくはずれてしまったため、開発されずに、古い街並みが残ったというわけです。今では、街並みとしては、日本一の規模の文化財なのです。あまり知られていないのは、地元の人が観光地化をのぞまないからだそうです。しずかに、趣のある街で暮らしたい、というのが、町の人々の総意のようです。さすがに、古い文化を引き継いだ町の人々は心が豊かです。ここの観光案内所には、信長の赦免状や、光秀の書面なども展示されています。でも、そういった資料よりも、この町を少しご案内しましょう。
 今井町の美容院
 今井町自転車屋さん
 今井町のお医者さん
 今井町の漬物屋さん
どうです、この町の方々がどれほど意識が高く素晴らしい人々か、この写真から伝わってきませんか? けれども、この遺産を護るためには、国や自治体が力をそそぐ必要があるようです。
 民家の屋根。急ぎ補修が必要です。
 民家の床下。こんなところにも、風流な透かし板が。ここも補修が必要です。
 今井町の象徴、称念寺。ここは補修中でした。
ほかにも、今にも倒れかけた長屋などがありました。大きな町屋だけでなく、商家の使用人や貧しい人々が住んでいた長屋もあってこそ、一つの町です。あの長屋こそ、補修修復して残してもらいたいものです。現在およそ750戸ある家々の中で、江戸時代から伝統様式を伝えた家々は550戸あるそうですが、その中の多くが補修しなければ失われてしまうものです。今の姿を百年後にも残してもらいたいです。どうか、一軒でも多く古い建物を残して下さいと祈らないではいられませんでした。
 今井町では家々の前がとてもきれいです。目についた寄せ植え。
 玄関外、通りがかる人の目の保養。ナデシコの一輪挿し。
 旧家、高木家に保存された火縄銃。奥のものが舶来品。手前の二挺は国産銃。
今回は駆け足の取材でした。こんど、もう一度、ゆっくり訪ねようと思っています。
ところで、タイトルの「神さまのいざない」って、何のこと? って、疑問に思われたかもしれません。
それは、この町と磐座のことです。このところ、いろいろあって、どうにも書けなくなっていたので、思い切って、以前から行きたいと思っていた二か所の取材へ行ってきたのですが、行ってみてわかったのです。書けなかったのは、こことここへ来なさいと、神さまがいざなってくださったのだなあと。見えない絆は人と人の間にもあるかもしれませんが、神さまと人の間にもあるような気がします。もう一か所の磐座はあまりにホームランだったため、もはや神さまがいざなってくれたとしか思えないのです。
『忍剣花百姫伝7』は、きっといいものに仕上がると思います。足りなかったパーツを、神さまがパチンとはめて下さったのですから。