『朝霧の立つ川』『おによろし』
『朝霧の立つ川』 高橋秀雄著(岩崎書店)
お馴染み高橋さんの『父ちゃん』『やぶ坂にふく風』(共に小峰書店)の外伝とでもいうべき『朝霧の立つ川』、今度も心にしみる物語です。この作品も、かつては同人誌「季節風」に掲載された物語がもとになっています。『父ちゃん』『やぶ坂にふく風』が父ちゃんものなら、今度はねえちゃんもの。
日本中の庶民が貧乏だった昭和三十年代、幼い弟たちをまもって頑張るねえちゃん、ミチエの物語です。
高橋さんのこれらのシリーズは、大人の読者も感動します。なぜなら、人間の描き方が深いのです。毎回、新刊を読むたびに感動するのですが、今回は主役のミチエはもちろんですが、クマさんにやられました。この爽快感はなんでしょう! スカッとしたい人におすすめです。
父ちゃんシリーズで感動を与えてくれた父ちゃんの悟一やんもちらっと登場して、父ちゃんファンを喜ばせてくれます。
『おによろし』 畑中弘子著(てらいんく)
さて、こちらは同人誌「プレアデス」に掲載されたシリーズがもとになった鬼ばなし10話の連作短編集。挿絵は、私の友人でもあるかすみゆうさん。
畑中さんの鬼の物語はライフワークといってもいいぐらいではないでしょうか。積年の研究と取材が実った労作です。
もしかしたら、10話の中のどの鬼かが、あなたに似ているかもしれません。魅力的な鬼がつぎつぎ登場します。
人は鬼、鬼は人。
人と鬼を、誇らしく物語ろうぞ。
畑中さんの素晴らしいお言葉です。
この一文が、この本のすべてを物語っています。どうぞ、よろしければ、日本の鬼の物語を楽しんで下さいまし。