めったに出会えない最高の犬

この日本では、飼えなくなった犬を保健所へ連れて行く人がまだたくさんいると知ったのは、あるテレビの特別番組でした。
保健所へ連れていけば、奇跡のように貰い手が現れてくれないかぎり、府県によって違いはありますが、1週間ほどですべての犬が殺処分されます。
飼い主を家族と信じて生きてきた犬が、いきなり信じていた家族に捨てられ、友達だと信じてきた人間の手で殺されるのです。
ガス室で犬たちが殺される映像を見ました。最後の悲しい鳴き声も聞きました。
その鳴き声は「なぜ? なぜ? 苦しいよぉ、おかあさーん…」と、飼い主を呼んでいるように聞こえました。
私はテレビの前で号泣しました。あの映像が、あの鳴き声が、今でも私の脳裏に焼きついています。
でも、保健所へ犬を貰いに行く勇気がありませんでした。もし、保健所に犬が一匹しかいないなら、せめて二匹なら、今でもとんでいくと思うのです。でも、何十匹もの犬がいるのです。その中からたった一匹、二匹を選ぶ勇気が私にはありませんでした。たとえ選べたとしても、残してきた犬や猫の姿やその目が一生忘れられなくなってしまうのではないかと思うと、それが怖くて行けません。
犬や猫は、この日本では、年間三十万匹も殺処分されるのですから。
いったい、どうやって救えばいいのでしょうか……。
犬は賢い動物です。殺されることがわかるのです。保健所で処分を待つ犬はみな震えています。そのことを一番つらく思ってらっしゃるのは、殺処分を押しつけられた保健所の職員の方かもしれません。
わたしは少女の頃から犬を飼ってきました。初めてもらってきた犬は雑種でした。雑種犬はたくましく、そしてとても賢いです。私が飼った犬の中でもこの子が一番賢い犬で、一番思い出深い犬です。
父の代から、これまで何匹も犬を飼ってきましたが、貰い手があって貰われていった犬もあります。純血種を飼ったのは九歳で亡くなった秋田犬と、今飼っているヨーキーだけです。ですから、今でも、紀州犬や秋田犬などの和犬の雑種犬が好きです。
もし私がベストセラー作家になる日があったら、殺処分される犬を救って貰い手を探すボランティアの団体にいっぱい寄付したいと思ってきました。(いまだにそうなれないのは、とても残念ですが…)
ところが、なんと、私がそう思ってきた「動物保護団体アーク」の本を、お友達の作家、高橋うららさんが書いていらしたのです。
私のような取らぬ狸の皮算用ではなく、確実に犬たちの力になれる本をうららさんは書いていらしたのです。なんて、素晴らしいことでしょうか。
この本がたくさん売れますように、そして、たくさんの人が、犬の素晴らしさに気づいてくださいますようにと願って、ここにご紹介させて頂きます。
ありがとうチョビ―命を救われた捨て犬たちの物語
ありがとうチョビー命を救われた捨て犬たちの物語』高橋うらら著(くもん出版
めったに出会えない最高の犬といわれた捨て犬チョビの物語。動物保護団体アークで、本当にあった犬と人間との感動の物語です。
犬好きの人は涙なしには読めません。でも、読み終えた後に、確かな勇気をくれる一冊です。