風邪の日はワインと歌集

お友達から頂き物のボージョレ・ヌーボーです。

噂には聞いていましたが、頂くのは初めてです。あっさり飲みやすくて美味しかったです。ありがとうございました。
とはいえ、風邪が抜け切っていないので、少しだけ。
それに、こういう時はお気に入りの歌集なんぞを引っ張りだしてくるのがいいみたいです。
稀代の名編集者、相原法則さんの歌集です。『相原法則歌集 落ちて滝』オリオン出版
以前頂いた『掲載禁止』などの歌も含めた「八十歳記念最終歌集」と、あとがきで相原さんは書かれていますが、きっと、まだまだこれからも生み出されるだろうお歌の数々を想像してしまいました。長年にわたる朝日歌壇入選歌も含めたこの本を、相原さんは落選歌集などと呼ばれています(相原先生らしい〜と思ったことでした)。
一つ一つ、思いのこもったこれらの歌をいちどきに読んでしまうのはもったいないので、折にふれて引き出してきては、どこと決めずページを開いては、今日の一首を楽しんでいます。
今日の一首は、
「老いてなお 名なく貧しく 人よきが 童話作家か テレビに在りて」
ああ、ほんとだ。そうだなあと感慨深かったお歌。
童話作家などというものは、ほんとにそういうものです。もうからないし、名も売れない、それでも、夢や希望を物語にして、子供たちを楽しませたいという奇特な人たちの集団(名作童話は、ほんとは大人も癒されるのですが)。それが童話作家ではないでしょうか。
ちなみに、昨日の一首は、
「十八年 かかり実をつく 大馬鹿の 柚子はすっくと 朝霧のなか」
うう、これも泣けます。
金儲けはへったくそ、でも、おのれの技の鍛錬に一生かける、昔ながらの職人さんの背中が浮かびます。
一方で、大馬鹿おひとよしの童話作家や編集者の背中も見えるようです。私には……相原さんの背の高い姿勢のいい背中が、朝霧のなかに霞んで見えました。