美しくて、美味しい本

ただいま、和菓子屋さん修業中!!―しごとでハッピー!和菓子職人のまき (ホップステップキッズ!) 『ただいま、和菓子屋さん修行中!!』著/加藤純子
三百五十年もつづく老舗の和菓子屋に弟子入りした小学生の卓。
ところが、老舗の菓子職人は渋いおじさんではなく、なんと金髪にピアスのお兄さん。
でも、お兄さんの作る和菓子、菊の練り切りは、世界一美しく、美味しいのです。
ああ、こういう職業物の本って子供たち大好きなんですよねえって思いながら、読み出してすぐ、文章表現の美しさに身の引き締まる思いがしました。
その場で引き込まれ、一気に読了。
これを読めば、和菓子を好きになることうけあいです。大人も子供も、自分で作りたくなるかもしれません。
主人公の卓が作り出した和菓子「夕映え」の美しさに胸を打たれます。
私は「夕映え」に、ふと、新美南吉の書いた「花埋み」を思い出しました。
「花埋み」は、野山に花々が咲きそめる春か、初夏の遊びです。
一人が地面に穴を掘り、その中へ摘んできた花を彩りよく並べて、その上から割れガラスを蓋にして、土をかぶせます。
目をつむっていたもう一人は、辺りの地面に指をはわせながら、友達が埋めた穴を探すのです。
ガラスの手触りを見つけ、指先で円をかくように土をよけていくと、透明なガラスの下に瑞々しい花のパノラマが現れます。
摘みたての花色が、ガラスをのせることでさらに鮮やかに艶めき、この世ならぬ、しんと深い景色に変化して立ち現れる……それが花埋み遊びです。
卓の作った「夕映え」は、そんな一瞬を思い起こさせました。
かつて、和菓子をこんなに美しく美味しそうに描いてくれた児童書があったでしょうか。……感動です。
日本の健康食品、和菓子のレシピページもついてます。