『てのひら咲いた』著/別司芳子(文研出版)

てのひら咲いた (文研じゅべにーる)

てのひら咲いた (文研じゅべにーる)

菜月のお母さんは小学校の先生。今年からは菜月と同じ学校で教えることになり、菜月はお母さんのことを「玲子先生」と呼ぶことにした。お母さんとおばあちゃんとの三人暮らしだが、お母さんの玲子先生はいつも忙しい。そんなある日、玲子先生のクラスの子のランドセルが傷つけられるという事件が起きた…。(BOOKデータより)
誠実に、真摯に紡がれた物語。
いじめ、教師と生徒、母と子、家族……さまざまなテーマが縒り合さって一本の太いロープのように重厚な物語になっています。
読者はその太いロープをたぐって、一歩一歩読み進めますが、楽しくウキウキ読み出す物語というのとは違います。
登場する子どもたち、隼人、菜月、美保、玲子先生、おばあちゃん……どの登場人物の思いに心を寄せても、切なく、心に痛みを感じます。読み進めるのがつらくなるほどです。
でも、本当に悩んでいる子どもたちが読めば、読み終えた後、暗く垂れこんだ厚い雲のむこうから、温かな陽射しが射してくるのではないでしょうか?
読むのに覚悟がいる本です。でも、覚悟をもって読めば、読むほどに、作者の思いがひたひたと伝わってきます。辛くとも、心に迫ってくる物語であり、最後まで読んだ人には、安らぎのプレゼントが待っていてくれます〜