『クリオネのしっぽ』(著/長崎夏海・絵/佐藤真紀子)

クリオネのしっぽ

クリオネのしっぽ

『バッテリー』のあさのあつこ氏が絶賛の青春小説。中2の6月、美羽は、学校というところは友だちをつくったり、楽しく過ごすための場所ではなく、「公共塾」だと考えることにした――。いじめの首謀者である水泳部の先輩に逆らい、暴力を振るったことで、浮いた存在になってしまった美羽は、転校してきたオールドファッションなヤンキー娘・幸栄に対し、「かかわりたくない」と強く意識しながらも、まるで空気を読まずにからんでくる幸栄との接点が、どんどん増えていく自分に気がつく。夫から「お姫様扱い」されながらも、浮気され、家を出て行かれた母親が徐々に自立していく過程や、病弱な弟の世話に明け暮れるクラスメート・唯のむき出しの本心に触れながら、美羽自身も、自分だけの世界にとどまらず、世界と自分とのつながりに目を向けはじめ、そここそが輝いていることに気がついていく。中学2年生特有の、あのもやもやとした時期を切り取った、どこかドライで、どこかリアルな青春小説。(amazonページ内容紹介より)

長崎夏海さんの新作。繊細すぎるほど繊細な少女の内面を描きつつ、そのくせ、少女ながら、胸のすくような啖呵あり! 辛い現実から目をそらさず、生き抜くために人生に向かっていく少女たちの強さも見逃せません。それは、ドライというより、ワイルド〜と紹介したくなる物語です。まさに、長崎さんにしか書けない世界だと感じました。ストーリーや登場人物を語ることより、この物語はぜひ、読んでみて〜といいたいです。児童書というより、大人が読んでも感じることの多いヤングアダルト小説でした。
また、物語内で紹介される宮澤賢治作品や、翻訳児童文学の数々も、児童書好きなら「なるほど〜!」と、つい頷いてしまう人も結構多いかもしれません。