『ダンシング・ハイ 強引な天使とダンスの王子さま!?』著/工藤純子 絵/カスカベアキラ

転校初日から失敗つづきで、友だちができるか不安いっぱいの野間一歩、小学5年生。ひょんなことから、クラスの天使・白鳥沙理奈の本性を知ってしまう。ダンスチームに入るなら、友だちになってあげる―妙な取引をもちかけられて、むりやりダンスをはじめることになったけど…!?夢と恋、友情がつまった青春★ダンスストーリー第1弾!(BOOKデータより)
さて、こちらはシリーズ一話です。
絵は、カスカベアキラさんです。まず、それがうらやましいです。カスカベさんは超多忙な画家さんで、以前、私のシリーズの絵をお願いしたかったのですが、スケジュールが合わず残念でした。そんなわけで、二重の意味で楽しみな一冊だったこの物語。
奇しくも、先にご紹介した『嵐を呼ぶ合唱コンクール』とも共通点があるといってもいい物語でした。なにより、ゼロから新しいことを始めようとする少年少女たちが魅力的な点において。
物語は、取り立てて優れているとも思えない自分を抱えながら夢に向かっていく主人公一歩(ニックネームはイッポ)を、容姿才能とも抜きん出ているサリナがある意味カバーしてくれるように見えるけれど、実は、サリナ自身にも果たせない夢があって…。そのあたりのキャラ設定に加え、イッポの王子さま一条君(ミッキー)、仲間のロボ、ネコなどのキャラも立っていて、わくわく楽しいです。でも、楽しいだけじゃない。
いじめに遭っている同級生の男子、ロボを見て、その場で戸惑っているイッポに、サリナがききます。「助けたいの?」「でも、あたしは、転校したばっかりで…」いいわけするイッポに、サリナは「そんなの関係ない。助けたいなら自分でいいなよ」と突き放します。自分がどうしたいのか?自分をごまかさず生きるにはどうすればいいのか…が、物語の中から響いてきます。最初の一歩を踏み出すことで、仲間が増えていく嬉しさ。ついに、憧れの王子さまも……! シリーズだから続きも楽しみです〜