『目の見えない子ねこ、どろっぷ』著/沢田俊子 絵/田中六大

目の見えない子ねこ、どろっぷ

目の見えない子ねこ、どろっぷ

3学期の終業式の日、つぐみの家のガレージに、子猫が迷い込んできました。しっぽを追いかけてくるくる回っている子猫は、病気で目が見えなくなっていました。つぐみに、どろっぷと名付けられた子猫は、命の危険もある大手術をのりこえ、つぐみの家の猫になりました。どろっぷに寄り添い、家の様子を教えたのは、おじいちゃん猫のメイでした……。3匹の猫とかかわりながら、たくましく育っていくどろっぷの姿と、4年生になったつぐみの成長を、実話を基に描きます。*小学校3年生から。 (BOOKデータより)
本当にあった動物のお話の名手、沢田俊子さんの新作です。
小さな子猫の目がばい菌に侵されて、もう目玉を取ってしまわないと助からないと知った主人公の女の子、つぐみが迷いながらお母さんに頼んだ言葉が忘れられません。手術で目玉を取っても、その成功率は五分五分。成功しても、この子猫は目が見えないという障害を抱えて生きていかねばなりません。いっそ、苦しい思いをさせずに安楽死をさせてあげた方がいいのか……母子家庭で決して裕福でないお母さんは悩みます。
その時、つぐみがいうのです。
「もし、あたしだったら、どうする? あたしとおんなじにしてやって」と。
その言葉に、高額な手術料金も覚悟して、お母さんは子猫の手術をお医者さんにお願いするのです。
命の重み、尊さを、そんな言葉で表現する女の子。そう、時として、子どもは大人よりずっと物事の真理をわかっていることがあるのです。一見幼そうに見えても、大人よりずっと想像力と洞察力がある子供の一瞬をとらえたところが素晴らしいと思いました。
大人の言葉や、理屈でなく、子どもの感性が、この物語には生きています。
そして、命を救われたどろっぷのたくましさに、読者は元気をもらうことでしょう。本当にあったお話だからこそ、とても励まされます。