『人生の約束』著/山川健一

人生の約束 (幻冬舎文庫)

人生の約束 (幻冬舎文庫)

IT企業のカリスマ経営者である祐馬。仕事に没頭する日々の中、かつての共同創業者であり親友の航平が、故郷で死んだことを知る。同じ頃、会社では不正取引が発覚し…。何もかも失った祐馬が、友の愛した故郷、家族や仲間達のため選んだ道とは―人生は失くしてから気づくことばかり。孤独の先にかけがえのない大切なものを見出す感動小説。 (BOOKデータより)
仕事場でつまづくほど積み上がった資料の中、このお正月には執筆を休んで、資料以外の本を読むと決めて手に取ったのが、この本でした。
皆さま、もうご存知のように、『人生の約束』は、映画化されます↓

実のところ、IT企業なんて、私にはちんぷんかんぷんじゃないかなあと心配していたのですが、いやいや、この物語は、まさに人間の物語でした。
作家であり、ロックバンドのボーカルであり、一方で経営者でもある山川健一さんだからこそ書ける世界観だったんだなあと、今、読み終えて思います。
読者によっては、3.11大震災以降に、時の政権によって声高に叫ばれてきた「絆」や「復興」の言葉がどれほど空っぽであったのかを、深く感じ取る人もいるのではないでしょうか。
故郷とは、祭りとは、いったい何なのか?
人の世に綿々と引き継がれてきた祭りを見失いつつある現代人が、どれほどの文化と誇りを失いつつあるのかを思いました。
人生においての故郷と祭りは、人間にとっての原点であり、血や肉であり魂なのです。
たとえ、故郷や祭を離れても、人は身内にいつも抱いているのです、故郷と祭りを……。
そして、そこに、成功も失敗も、愛も友情も帰っていくのですね。
帰る場所があるというのは、そういうことなんだと思いました。
祐馬と航平だけではなく、魅力的な脇役にも心惹かれる一冊でした。