『めざせスペシャルオリンピックス・世界大会 がんばれ、自閉症の類くん』著/沢田俊子

この物語の主人公、深津類くんが自閉症と診断されたのは、三歳のときでした。医師から、「大人になっても、知能も社会性も小学低学年のままです。」と宣告されましたが、家族の応援と小学校に入学してからの友だちとの出会いが、大きな力となって類くんを成長させました。そして、さまざまな試練を乗り越えた類くんは、公立高校に入学し無事卒業することができたのです。大人になった類くんは、乗馬クラブで働きながら、知的障がい者の競技会スペシャルオリンピックス・世界大会(乗馬部門)を目指して練習にはげんでいます。(BOOKデータより)
自閉症は治らない。自閉症の子は、普通の人のように、誰かを思いやるような感情は働かない……そう信じている人は多いかもしれません。
けれど、この本の主人公、類くんは、誰より思いやり深い、優しい青年になりました。
その奇跡の過程をこうして知る事ができたことに、心から感謝したいと思います。
治らないといわれる障害であっても、友達に恵まれて、その友達から愛や友情を注がれたことによって、類くん自身の心にも、友達への友情と愛が芽生え、その内なる篤い思いそのものが、類くんを驚くほどに成長させたのです。
奇跡は、人の心の中にこそあるのだと、強く感じました。
中学時代の類くんに、「死ね!」と命じた同級生たちの酷さ……それは、いじめなんてものではなく、殺人未遂といってもいいような仕打ちでした。けれど、その恐ろしい試練からも、類くんは守られました。両親、先生、友達の愛によって……。
ありがとう……と、読み終えた時、お礼を言いたくなる物語。