『白い自転車、おいかけて』著/松井ラフ 絵/狩野富貴子(PHP研究所)

白い自転車、おいかけて (とっておきのどうわ)

白い自転車、おいかけて (とっておきのどうわ)

ぴかぴかの白い自転車を買ってもらったゆかのお姉ちゃん。一方、補助輪付きの自転車しか乗れず、お姉ちゃんと遊んでもらえなくなり、退屈なゆか。ある日、ゆかは、お姉ちゃんの自転車の鍵をこっそり隠してしまいました。お姉ちゃんは困りましたが、お母さんが予備の鍵をもっていたので、大丈夫でした。あくる日、お姉ちゃんは、隣町のスポーツ公園まで出かけましたが、夕方になっても帰ってきません。スポーツ公園の入口に停めていた自転車がなくなり、遅くなったのでした。次の日、ゆかは、補助輪付きの自転車で、お姉ちゃんの自転車さがしに出かけます。ところが、スポーツ公園の手前で転倒、ひざをすりむいてしまいます。ゆかが、途方に暮れていたところ……。悪いことをしてしまったと、罪の意識にさいなまれるゆかの心の動きが手にとるように伝わってきます。(BOOKベースより)
第14回日本児童文芸家協会の創作コンクールつばさ賞(幼年部門)優秀賞受賞作品です。
新しい自転車を買ってもらったおねえちゃんは、妹のゆかを置いてきぼりで、どんどん外遊びに行ってしまいます。「自転車さえなければ…」と思ってしまうゆかの気持ちもわかるし、大きくなって行動範囲が広くなったおねえちゃんが、いつまでも、妹と家でゲームなんかしてられないのもあたりまえ。これは、子供の成長の通過点であって仕方がないというより、おねえちゃんの成長を喜ぶべきことなんですが、そう切り捨ててしまうのは大人だけ。子どもたちは、日々、精一杯生きて成長しているのです。だから、おねえちゃんの自転車の鍵をかくしてしまったりもするけれど、おねえちゃんのために頑張ることもできるのです。姉妹の心の成長を優しく細やかに描いた心温まる物語です。by越水利江子