『恋する新選組』外伝 新選組屯所事件簿2
※初めての方は、新選組屯所事件簿1からお読みください。
◆新選組屯所事件簿2
新選組局長室にて
土方歳三 「どういうことか、聞かせてもらおうか」
原田佐之助 「どういうことって、その、まあ、なんだ。ちょっと、食い過ぎて…」
沖田総司 「あれ? このシーン、なんか既視感(デジャ・ブ)が…!?」
歳 「飯櫃(めしびつ)がからっぽだ」
佐 「あ、いや、これはなんだ、その、新八っつあんが食ったんだ。」
歳 「永倉が? では、酒樽も空っぽだが、これも永倉君が呑んだのかね?」
佐 「うん、それがそうなんだ。まあ、かんべんしてやってくれ、なあ、土方さん! たかが飯や酒だ…」
そこへ、市中見廻りから、永倉新八が帰還。
新八 「いやあ、今日は台風が来ているそうだ。涼しくて助かったよ。」
歳 「ご苦労、永倉君。ところで、君は、市中見廻りだというのに、飯はともかく、大酒まで呑んだのかね?」
新八 「は? 何の話だ?」
歳 「原田君。こそこそ、どこへ行く」
佐 「あ、いや、ちょっと、厠(かわや)まで…」
歳 「ぶっわかっもん! 毎食茶碗に五杯、三度の飯プラスおやつで、まだ足りんのかっ!」
佐 「うっへ…」
総司 「ますます、既視感が…!」
新八 「なんだ、佐之さん。また、飯を食い過ぎたのか。」
歳 「酒もだ。樽を空けた」
新八 「なんだって!? そりゃあ、ひでえ。見廻りの後のかけつけ一杯、きゅうっとやるのを楽しみ帰ってきたのに」
佐 (こそこそ……)
歳 「原田君。ところで、君のふところがふくらんでいるが、それは何だね?」
佐 「あ、これはその……食いすぎたんで腹がでっかくなっちまって。あははは」
そこへ、近藤勇、ごきげんで帰還。
近藤勇 「いやあ、ただいま。会津のお方からみやげをもらった。うまい地酒だそうだ。ついでに、料理屋で肴をみつくろってきた。みんなで呑もう!」
佐 「近藤局長! あんたは命の恩人だっ」(涙ぐむ佐之助)
勇 「なんだ、何かあったのか?」
歳 「ふんっ」
勇 「総司、何があったんだ?」
総司 「いや、既視感が……」
歳 「そういや、近藤さん。守護職屋敷に行っただけにしては、帰りが遅いな」
勇 「ぎくっ…いや、それはその…ちょっと寄り道を……」
歳 「ほう、白粉くさい寄り道かね」
勇 「ぎくっぎくっ……そ、総司ぃ、助けてくれぃ…」
総司 「土方さん。なんか、イライラしてませんか。そういえば、土方さんに、島原から天紅のついた色っぽい恋文がどっさり来てましたが、あれ、どうしました?」
歳 「むむっ……あんなものは捨てた」
総司 「へえ、そうですか。でも、小島の義兄さんのところへ、何かがどさっと届いたとか。親戚で廻して面白がったらしいですよ。土方さんの俳句もそえられていたとか……報国の心わするゝ婦人かな…」
歳 「坊や、お前は相当人が悪いな」
総司 「はい。最近、土方さんに似てきたようで…」
歳 「なら、ついて来い。おれは急に報国の心を忘れたくなった」
総司 「ええっ!?」
歳 「おれに似てきたんだろう?なら、来い。今度こそ、いい女を紹介してやる」
総司 「いえ、結構です! わたしはべつに……!」
歳 「いいから来い。こいつらに付き合ってたんじゃイライラが増す」
総司 「いえ、わたしは結構です。イライラしてませんからっ。近藤先生! 助けて下さいよぉ〜」
勇 「すまん、総司。だが、もうそろそろ、いい頃だ。行って来い!」
総司 「そんなぁーーーっ」(ずるずる)
総司悪夢のデジャ・ブの夜。屯所の軒下で。
佐 「ほれ、食え。おめえは子沢山だからよう、握り飯、でっかいの持ってきたやったぞ。」
野良犬の母子に、握り飯をやる佐之助。
佐 「感謝しろよ。おめえらの恩人は沖田総司ってえ、一番隊組長だ。市中見廻りのときゃあ、かみつくんじゃねえぞ」
(念のため、越水はヒマではありません)
※ブログ中の新選組キャラ絵は『恋する新選組』(絵/朝未さん)シリーズのギャグパターンです。