『命のバトン 津波を生きぬいた奇跡の牛の物語』著/堀米薫(佼成出版社)

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宮城県農業高等学校、通称「みやのう」では、生徒たちが三十四頭の牛を大切に育てながら、牛のコンテスト「共進会」を目指してがんばっていました。ところが、二〇一一年三月十一日、東日本大震災がおこり、大津波が「みやのう」におそいかかります。生徒たちだけでなく、牛の命も守ろうと奮闘した先生たち。その手によって助けられた命は、やがて被災した人たちに大きなはげましを贈ったのです―。(BOOKデータベースより)
あの時の恐怖がよみがえります。あのなか、「みやのう」の学生たちが代々も護ってきたDNAを継いだ牛たちを救おうと、命がけで飼育小屋に駆け付けた先生方の熱い思い。津波の迫る寸前、飼育小屋につながれた牛たちを放すことはできたのですが、直後、押し寄せてきた大津波。死を覚悟した先生方を救ったのは「みやのう」の高台にあった農場の滑車の鉄骨でした。
無事でと願った牛たちの多くが溺死したなか、高台に逃げて助かった牛たち、遠い町でみつかった牛たち、どこの牛ともわからないのに、餌をやってくれた町の人々…どの出来事も、あの時の出来事と思えば、胸に迫ります。
人も動物も助け合ったあの日、あの時……命の温かみがしみじみと伝わってきます。
命の瀬戸際に追い詰められた時、牛も人も命の温かさにこそ、心を癒されるのかもしれません。